地域循環型養鶏

あなたは鶏の暮らしをみたことがありますか?
Sanagi Shokudoでは、人の居住エリアに近いところに養鶏場があります。
あえて人の目に触れる場所で養鶏をしたいというのがその理由です。

ここ静岡市駿河区でも、昔は多くの家の庭で鶏が暮らしていました。
人の食べ残しや残渣・庭の草や虫を食べ、卵や肉を提供し、共生していたのです。ところが、
・うるさい
・くさい
などの理由から、養鶏の現場は人の居住エリアから遠ざけられ、目に見えない場所で鶏たちが飼育され、誰にも知られることなく一生を終えるようになりました。

また、大量生産・大量消費の流れの中で、より安価に、より大量に生産されることが重視され、鶏たちは「効率化」の対象となり次第に生きものとしてよりも、鶏卵・鶏肉生産のツールとして扱われるようになっていきました。

鶏を育ててみると、気性が荒かったり穏やかだったり、卵を産んだり産まなかったり、人懐こかったり怖がりだったり、本当に個性豊かな鶏たちの姿に出会うことが出来ます。

彼らが、生きていること。そしてその命をもらって私たちが生きていること。それらを実感すると、鶏を尊敬し、大切に育てる養鶏家でありたいと思うのです。

私の個人的な思いが原動力となっているので、自己満足の養鶏ですが。
でも、皆さんが鶏たちに少し思いを馳せてくれたら、会ってみたい、関わってみたいと思ってくださったら、皆さんの毎日もきっと豊かになると思っています。

 

Sanagi Shokudoの養鶏

いつも並々ならぬ思いで養鶏をしていますが笑
シンプルに表現すると以下のことを大切にしています。

①鶏たちが心地よく暮らしていること

②雌鶏だけを選ばず、雄鶏も一緒に育てること

③サステナブルであること

詳しくはこれから説明しますね。(長文失礼します)

 

①鶏たちが心地よく暮らしていること

<放し飼い>
耕作放棄地を活用して、鶏たちの放牧場にしています。
日向ぼっこをしたり、砂浴びをしたり、走ったり、隠れたり、気ままに過ごすことが出来ます◎

<安心して休める場所>
鶏は飛べないため、身を守るために木の上に止まったり、茂みに隠れたりすることを好みます。
また、暑さに弱いため、夏は必ず日陰をつくります。
そういう場所をふんだんに用意するようにしています。

<鶏のリズムに合わせる>
一般的な養鶏では、夜に電灯を点けたり、絶食させたり、摂水を制限したりして、「短期間により多くの、よりきれいな卵」を産ませようとします。
その方が低コストだからです(肉養鶏もそうですね)。

一方サナショクでは、その辺りほぼ自然任せです。日が沈んで暗くなれば鶏は寝床に帰り、明るくなれば活動を始めます。
餌も、食べたいときに食べたいものを食べたいだけ食べます。
だから、卵も「産みたいときに、産みたいだけ」。
季節によって、産む数も大きさも、殻の模様もテクスチャーもばらばらです。
それでいいと考えています。

②雌鶏だけを選ばず、雄鶏も一緒に育てること

国内のほとんどの採卵養鶏場には、雄鶏はいません。
雄鶏がいなくても、雌鶏は卵を産んでくれるからです。
また、平飼い養鶏場などで多数の雌鶏に対して数羽、雄鶏がいる養鶏場もありますが、サナショクの養鶏はこれとも違います。

卵からひよこが孵るとき、雄は雌に対してどのくらいいると思いますか?

たとえば、10羽のひよこが生まれたとすると、その中で5~6羽は雄鶏です。
この割合をコントロールする技術は今のところ世界でも実用化されていません。

では、採卵のために育てられる雌鶏たちと一緒に生まれてきたであろう雄鶏たちはどこへ…?
答えは、「処分」です。
最初に鶏を飼い始めるとき、私は初めてそのことに気が付きました。
そして「雌鶏を20羽」と注文したのを、「鑑別せずに20羽」と訂正しました。
(「鑑別」とは、雄と雌を見分けて仕分けすることです)
生まれてきた命を「要らないから棄てる」行為にだけは絶対に加担したくなかったからです。たとえ自分で手を下さなかったとしても。

実際、一緒に育てるには幾つかの問題点がありました。
ただ、幸いそれは多くのひよこの命を犠牲にしてまでも避けるほどのことではありませんでした。工夫することで幾らでもクリアできます。

サナショクでは、雄鶏も雌鶏も、一緒に受け入れる養鶏を続けていきたいと考えています。
ぜひ、そのような背景を知っていただけたら。そして普段口にする卵やお肉も、そういった観点で選んでくださる方が増えることを願います。

 
③サステナブルであること

飼料はすべて手づくりです。米や米ぬかは近所のお米屋さんから、魚は魚屋さんから、鰹節は蕎麦屋さんから、おからは豆腐屋さんから、そしてミネラル源はサナショク産の野菜から。他にも様々な国産の原料を使い、あの手この手でつくります。

このように、地域で無理せず手に入るもので配合を考えるようにしています。
輸入したり、遠方からわざわざエネルギーを消費して持ってこなくても、近くに利用できるものがたくさんあるからです。
有用なのに廃棄物として処分せざるを得ないものを引き取ることで、お店側からも喜んでもらえるのです。

また、鶏のふんは堆肥として畑に還元しています。
地域内でものや人や鶏が循環する、そんな農業を目指しています。